第7章 激闘!バケモノ VS 化け物

7.過去へ連れ戻すその笑み


「ちょ、ちょい待ち、待ってくれ!!!」

ナムは時限弾を持った手を高く上げて喚いた。
Tシャツの裾から般若のバックルが顔を出す。それを目にしたサムソンが、うんざりとした表情になった。
「手を下ろせ。お前は金輪際ホールドアップするな。般若はもうたくさんだ。」
「いや、考える時間くれって!転職するんだったら条件聞いとかないと・・・」
「さっき手に持ってる物見なかったか? そんな時間どこにある!」
「今いる部隊、仕切ってるヤツがヤベーんだって!
頭のイカれた暴力オヤジで、勝手に抜けるとどんな目に遭わされるかわかんねぇんだよ!」
苛立ち始めたサムソン宥め、腕を組んで考え込む。
「え~と、アンタ なかなか部下思いだし、強ぇしイブシ銀の渋みがあってカッコいいし、見込まれちゃったら転職してもいいかな~とは思うんだけどさぁ・・・。」
「・・・もういい。死ね。」
サムソンが銃を構え直す。
しかし。
トリガーに掛ったその指は引き絞る前に固まった。
標的がいきなり 笑った のだ。
ふてぶてしく、狡猾に!

「やっぱ、止めとくわ♪ ・・・ ロディ !!!」
「うぃッス!!!」

突然、耳障りな羽音が響き サムソンの手から銃が弾かれた!
武装兵達の悲鳴も聞こえる。彼らは数匹の 蜂 に襲われ、大混乱に陥っていた。
針で刺してくるのではない、鋼のボディで体当たりしてくる 玉砕上等 の 特攻 だった。
形勢逆転である。ナムはニンマリほくそ笑んだ。

「ナムさん! 大丈夫ッスか!?」

岩陰からロディが顔を出す。
カメラ搭載蜂型ロボスパイ・ビーを操作する舎弟に サムズアップで無事を伝える。周囲を飛び交う 機械の蜂 に、仲間の救援に気付けたのだ。
ロディを狙う武装兵の銃は、横から払われるように弾き飛んだ。
A・Jが別の岩陰から身を乗り出して銃を構えているのが見える。シンディが一緒にいるのは以外だが、彼の後方支援バックアップは有難い。
「エーちゃん、ナイス!♪」
ナムは地を蹴り、肩からサムソンに突っ込んだ!
「ぐっ・・・?!」
地面に倒れるサムソンを尻目に、ロディに駆け寄り背中に庇う。
その時、棍棒を構える反対の手から ひょいとKH時限弾が奪われた。
「へ? ちょ、えぇ!?」
慌てるナムに スレヴィ が 意味ありげにニヤリと微笑う。
彼は手にした 電磁メス を慣れた手つきでクルクル回し、KH弾のカプセルの外装を開けた。
調子の悪いオモチャを調べているかのようだった。ほんの数カ所いじっただけでKH時限弾は動きを止めた。
これ以上無いドヤ顔で、スレヴィは大きくふんぞり返る。

「ホイ、解除っと。
ワイ、実は 爆弾オタクやねん。ロディちゃんが電磁メス持っとってラッキーやったな。コレでもうコイツはただの 産業廃棄物 や。
人様の命掛っとらんかったら、ホンマは 爆発 させてみたいけどな♪」
「うぉぉ!マジかレヴィちゃん スゲーぞお前!!?」
「スレヴィさんカッコいいッス!サラッとヤベぇ事言ったッスけど!!!」
「解除1個につき、10万エンや。」
「 ・・・え~・・・。」

 どかっっっ!!!

そんなやり取りをしてると、3人まとめてタックルされた!
岩陰に折り重なって倒れ込むなり、凄まじい銃声が轟いた。
A・Jと武装兵達の撃ち合いが始まったのだ。伏せるのが一瞬でも遅ければ 蜂の巣 になっていただろう。
「プロ相手にボサッとしてたらヤバイっしょ?」
地面に顔面打ち付けた。その激痛に耐えるナムに馬乗りになってる 変質者・マルギー が陽気に笑う。
「このお礼は大臀筋でいいよン♡」
「あのそれ、ロディさんのでお願いします。」
「何でッスか!!?」
ロディの苦情を遮るように、金属が空を切る音がした。

 キュイン!

煌めく銀光が武装兵達を襲う!
ナムは変質者を振り落とすようにして跳ね起きた!

「モカ!?」
「ここに来る途中で見っけたから連れてきたんだよ。1人じゃ逃げたくないって言うしね。」
マルギーの説明はほとんど耳に入らなかった。閃くワイヤーの残光を頼りに目線を走らせモカを捜す。
銃を撃ちまくるA・Jがシンディと一緒に潜む岩。そこから少し放れた所に、何かの建屋跡がある。
その物陰に 彼女は居た。
ワイヤーソードを構えるモカは、目が合うと安心したように微笑んだ。

「 ~~~っっっ!♪!」
安堵と興奮で身体が震えた。
ナムは思わずスレヴィ・マルギーを2人まとめて抱きしめた!
「最っっっ高だよお前らは! マジでサンキュー、愛してるっ!♡♪」
「だから お礼は大臀筋で・・・。」
「ロディよろしく!」
「何でッスか!!?」
A・Jの銃乱射にも負けない怒声が、別の岩陰から聞こえてきた。

「何やってんのよアンタ達っ!
ナムさん、宇宙港ゲートにも爆弾仕掛けられてんの!早く行かなきゃ爆発しちゃう!」

「ぅお!?マジか?!」
これはふざけてる場合じゃない。
先ずは何とかこの場を切り抜け、宇宙港ゲートに向かわなければならない。慌ててスレビィ・マルギーを雑に振り捨て、モカに向かって目配せした。

( 来い! )

意図は通じた。モカが頷き動き出す。
建屋跡から抜け出ると、A・J相手の銃撃戦に手こずる武装兵達に気付かれないよう、身を屈めて走り出した。
その時だった。
切り立った崖の下から、そ れ・ ・がいきなり飛び出したのは!!!

 ズドオォオン!!!

信じ難い事にそ れ・ ・は一度高く飛び上がり、モカの目の前に降り立った!
激しい地響きに全員驚愕、銃撃戦がピタリと止んだ。
A・Jは思わず後退り、その背中にシンディが小さく叫んでしがみつく。
スレヴィ・マルギー、ロディ目を剥き、言葉を失い絶句した。
武装兵達でさえ状況を忘れ、恐怖に顔を歪ませる。
誰もが恐れ慄く中で、倒れた姿勢でそ れ・ ・を見上げるサムソンだけが正気だった。
彼は心底忌々しげに、吐き捨てるように呟いた。

「こんな所に居たか・・・バケモノめ!!!」

静まり返る修羅場の中、そ れ・ ・がゆっくり体を起こす。
全身血まみれで両手に何かをぶら下げている。
サムソンがモカを捜すよう命じた2人の武装兵。見る影もなくボロボロだった。

「・・・ひっ!?」

微かに聞こえた少女の悲鳴に、そ れ・ ・が目線を足下に落とす。
異常に光る双眸が、少女を執拗に眺め回す。
そして、そ れ・ ・は笑った。
怖気が走るほど、禍々しく。
狂気に満ちたその笑みは、悍ましい記憶を呼び起こす。
恐怖にとらわれ立ち尽くす少女をら忌まわしい場所へと引きずり戻す!

「 きゃあああぁぁぁーーーーー・・・!!! 」

うち捨てられた採掘場に、少女の絶叫が轟いた!!!

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