第7章 激闘!バケモノ VS 化け物

16.余談:黄金比率の女


エベルナ統括基地から撤収する時、A・J、スレヴィ、マルギー達とは「とても仲良く」お別れした。

「また何かあったらよろしくね~♪」

そういった時のA・Jの「喜びよう」は半端じゃなかった。持つべきものは気心知れた親友なんだと、深くしみじみナムは思う。

「あのご様子を喜んでるとか言うッスか・・・。」
「喜んでんだよ、ああ見えて。」
「・・・。」

ロディは改めてA・Jのを見た。
ナム達とは少し離れた、着床ポートで出発を待つオンボロ輸送機の尾翼下。シンディと喧しく喧嘩し始めた彼は確かに楽しげに見える。
ほんの少しだけ、たぶん、きっと。
「そう、何ッスかねぇ・・・。」
少々複雑な面持ちで、ロディが深くため息ついた。

一方 スレヴィはわざわざ自作の「請求書」を渡してくれた。
まさか本当に金を請求されるとは思わなかった。しかもその金額ときたら・・・。

「蹴りが5千エン、拳1発3千エン、爆弾解除50万エン?!!」
「単価上がってるッスよ!??」
「危険手当込みや。当たり前やろ?」
「爆弾解除、暴利じゃね?!」
「何言うてんねん!KH線弾やで?
こっちも当然、成功報酬上乗せ価格や!!!」
「・・・。」

何とか無利子無期限にしてもらった。
このままとぼけまくって踏み倒すことにした。

で、自称変質者マルギーなのだが・・・。

「モカさんのスリーサイズ???」
「あ、マルゴットさん。ちょっとお声は控えめに・・・。」

目を丸くするマルギーに、ナムは頭の後ろを掻きつつ愛想笑いを浮かべて媚びた。
何もオンボロ輸送機の陰に呼び出し聞く事じゃない。わかっていても気になった。シャワー室で見たモカの姿が、いかなるサイズのモノなのか。

(いや、やましい気持ちで知りたいんじゃなくて。
ただ、その、ナイスバディってんじゃなかったけど、なんつーかこう、とにかくいい感じに見えたから、参考までに知っておきたいな〜、なんて・・・。)

充分やましかった。

マルギーはニッコリ微笑んだ。

「やめとこうよ。ナムさん。」
「な、なんで?」
「彼女さぁ、心に傷、あるでしょ?」
「 !? 」

変質者の一言に、思わずハッと息を呑む。
マルギーはモカの方を見た。A・Jと言い合うシンディを宥めるモカは、苦笑しつつも楽しげだった。

「なんてゆーか、彼女はそういう目で見ちゃダメな感じがするんだよね。
心の深い所が傷ついて、まだ治ってなくて苦しんでるっていうか・・・。
そんな娘は遊び半分で性的な事に触れちゃダメ。大事にしてあげなきゃね。」

「・・・マルギー、お前、やっぱスゲーな。」
反省した。もう、思いっきり猛省した。
(大事にしてあげる、か・・・。よし、火星に帰ったら 告白 しよう!
モカは俺が大事にする! これ以上無いほど徹底的に、めっっっちゃ大事にしまっくたる!!!)
拳握りしめるナムを見て、マルギーが急にニヤリと笑う。
にじり寄るようにして近づくと、素早くコッソリ耳打ちしてきた。

「まぁ、お年頃男子の気持ちを考えるとカワイソーだから、一言だけ言っとくね。
『女性用下着売り場のマネキン人形』。モカさん、そんな感じだよ♡
あれさ、誰が見ても綺麗って思えるよう、それぞれのパーツが『黄金比率』で造られてんだって!
じゃ、健闘を祈る、元気でね~ン♡♡♡」

・・・後で思うに、やっぱり「わかりやすかった」らしい。
この時固まった告白の決意はマルギーにまでバレていたのだから、カルメン・ビオラにも当然バレる。いじり回されても仕方が無い。
ともあれ、こうしてA・J、スレヴィ、マルギー達とは名残惜しくもお別れした。
近いうちにまた会える気がしている。
その時はもう少し穏やかに 友情 を育みたいものである。
爆弾テロやバケモノ奇襲、そんな修羅場での再会は、ハッキリ言ってゴメンだった。

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メチャクチャくだらない 後日談 。

ナムとロディがビオラのお供で火星中央都市マルスに来たある日の事。
遊びに来たわけではない。ビオラ女王様の送迎とショッピングの荷物持ち。「ケーキ食べ放題のカフェで奢ったげる♡ 」に見事に釣られた奴隷さながらの重労働である。
大量の戦利品購入品を両手に持たされ、女王様に引っ立てられて32番街 をぶらついていた時。
あるお店のショウウィンドウ前で、ナムがいきなり発狂した!

「3.1415926535!
8979323846 2643383279
5028841971 6939937510
592307816ーーーっっっ!!!」

「円周率爆暗唱!? しっかりして下さい、ナムさん!!!」
「きゃーっ!? アンタいったいどーしたのーっっっ!!?」

ビオラの行きつけの高級ランジェリーショップ「ミラージュ」、その華やかなショウウィンドウ。
美しい マネキン人形 達が、色とりどりのランジェリーを纏って道行く人々を誘惑している。
黄金比率の曲線美である。

・・・生殺しだった。

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