忘却魔法は魔女には不要!
4.海の男の家庭事情
輸送船「リンデンブール」号は、ルシアーナ海峡に差し掛かった。
この東西2つの大陸に挟まれた海峡は、西側大陸のデレク国に管理されている。通過するには非常に厳しい「関所」を通過せねばならなず、船という船、船乗りという船乗りから非常に嫌われている海峡だった。
「面倒くさい所だよ。ここは。」
デッキブラシで甲板を磨く先輩船乗りが陽気に言った。
「デレク国は厳しい国だからな。役人がドカドカ乗込んできて、とにかく船中隅から隅まで徹底的に調べ回るんだ。
積み荷の内容や量はもちろん、乗組員が持ち込んだ私物にまで目ぇ光らせるからたまんねぇ。
密輸や密航 なんてできないぜ!
バレたら即刻監獄行き。死刑にだってなりかねねぇ。」
「そ、そうなんっすか?おっかねぇっすね。」
見習い船乗り・バーンは目を丸くした。
彼はまだ若く、外洋を巡る船に乗るのはこの航海が初めてだった。
「まぁ、うちの船は大抵問題なく通れるけどな。
船長様が真面目一辺倒の堅物だからなぁ。密航はともかく密輸なんてあり得ねぇよ。」
バーンの教育係でもある先輩船乗り・ロドニーは、甲板にバケツの水をぶちまけた。
「でもよぉ、真面目ったって限度があるぜ。
規律遵守に時間厳守、自分を律して誠実に!ご立派な事った!
自分がするなら勝手だが、部下にもそれを押し付けやがる。息苦しいったらありゃしねぇ!
これで給料が他より高くなけりゃ、とっくに他所の船に乗り換えてるところだぜ。」
水浸しになった床をデッキブラシで再び磨く。
良く晴れた空に潮風が心地よい。こんな日の甲板は掃除するより、寝そべって昼寝したい気分だった。
「海上では何が起きるかわからん。
だから己を律するのだ。」
「げっっっ?!」
頭上から聞こえた威圧的な声に、ロドリーが直立不動でしゃちこばる。
バーンもピシッと背筋を伸ばし、声がした方を振り仰いだ。
上甲板の一つ上、船橋に近い遊歩甲板で男が2人を睥睨している。
リンデンブール号船長 マクミラン である。
彼は制服上着の懐から、懐中時計を取り出した。
「甲板掃除が予定より約5分と32秒、遅れているようだが?」
「す、すみません! 今終わったところです!」
「無駄口を叩く暇があったら身体を動かしたまえ!
仕事は甲板掃除だけじゃないはずだ。」
マクミラン船長は踵を返した。
「・・・ケッ!石頭の堅物め!」
去って行く船長の立派な背中に、ロドニーが小声で悪態ついた。
---×××---×××---×××---
「なにが『約5分と32秒遅れている』だ!まったくよぉ!」
ロドニーは用具入れにデッキブラシをぶち込んだ。
船底にある倉庫には、掃除道具や救命用具、ロープ類や日常品などが収められている。
お片付けなど誰もしない。放り込まれた備品類でごった返してる倉庫の中は、薄暗くて陰気だった。
「嫌な野郎だぜまったく!
下っ端甲板員の雑用にまで時計片手に目ぇ光らせやがって!」
「はっはっは。確かになぁ。」
用具棚にバケツを並べるバーンの横を、初老の男が通っていった。
甲板長のダニエルだ。このリンデンブール号に長く乗船する古参の船乗りである。
経験豊富で気さくな彼は、船員達から大変慕われている人物だった。
「今時珍しい男だよ、あの人は。
他人にも自分にもすこぶる厳しい。ついでに 家族 にもな。」
「甲板長、船長のご家族、知ってるンっすか?」
「船長とは一度だけ一緒に酒飲んだことがあってな。その時チラッと聞いたんだ。
奥さんと子供が居るそうだが、いろいろ驚かされたよ。」
用具入れ横には空になった潤滑油の一斗缶が積み上げられている。
その山の頂にもう一つ空缶を積み上げなら、ダニエル甲板長は説明した。
「奥さんが外で働くのは絶対禁止。
ドレスも装身具も、勝手にゃ買わせない。女は無駄に着飾るな。
飯のおかずは最低5品は必ず作れ、家の掃除は隅から隅まで塵一つ無くしっかりと。
子供の躾や教育についても、そりゃぁ細かい事言ってたな。神経質過ぎるくらいだったよ。」
「うわ、今時亭主関白きどるかよ?
ますます嫌な野郎だぜ!イケ好かねぇ!」
ロドニーが激しく息巻き、用具入れの戸をバシンと閉めた。
その振動で、積み上げられていた一斗缶の山がグラリと揺らぐ。
「ぅわっ?!」
崩れ落ちはしなかったものの、驚いたバーンは足を滑らせ、床の上にひっくり返った。
その時、偶然見えてしまった。
暗い倉庫の一番奥に、ひっそり蠢く影の姿を!
「なんてこった・・・。 密 航 者 だ!!!」
床に尻を打ち付けた痛みなんて吹っ飛んだ。
先日寄港した中継港から乗込んだらしい。
怯えて震える2つの影は、互いを庇うようにして抱き合った。
---!!!---∑(゜ロ゜)---!!!---
密航者は兄妹だった。
12,3歳ほどの利発そうな少年と、まだ幼い小さな少女。どちらも薄汚れた出で立ちだった。
取りあえず船底倉庫から連れ出し、食堂のテーブルに座らせた。
料理長が好意で出した温かいシチューを貪り食べる。
その姿が痛ましい。食堂に集まったリンデンブール号の船員達は、誰もが目を潤ませた。
「すみません。
密航しか方法が無かったんです。」
少年が詫びの言葉を口にした。
「僕達、ここからずっと遠い所にある小さな村から 誘拐 されたんです。
人売りに捕まって、船で外国の街まで連れてこられて・・・金持ちの家に奴隷として売られました。
隙を突いて逃げ出して、何とか港まで来たんです。でも村に帰るにはどの船に乗っていいか全然わかりませんでした。
そもそもお金なんて持って無いし、どうしていいかわからなくてマゴマゴしてたら、逃げて来た屋敷の人達が追いかけて来て・・・。」
「それで、当てずっぽうに密航したのか・・・。」
目に涙を浮かべて頷く少年に、バーンは胸を締め付けられた。
「何とかしてやりてぇよなぁ。可哀想に。」
ロドニーが投げやり気味につぶやいた。
「でも、あの船長がなんて言うか!
アイツの事った、絶対コイツらを役人に突き出しちまう!」
「そんな! 密航者は監獄行きか死刑なんっすよ?!
拐かされて売リ飛ばされた子供達だ。
少しでも人の心があれば、助けてやろうって思うでしょ?!」
「あの野郎に人の心なんてあるかよ!
無事に海峡抜けるためなら、子供だって平気で見捨てちまうさ!」
激しく言い合うバーンとロドニー。
それを黙って眺めていたダニエル甲板長が、突然ニヤリと微笑した。
「だったら、俺達のやる事ぁ一つだな。
この子らを 匿う ! 船長にゃ言わずに、だ!」
リンデンブール号の船員達に、異議を唱える者はいなかった。
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デレク国税関役人が船に乗込んできたのは、それから間もなくの事だった。
ロドニーが話してくれたとおり、役人の調査は執拗だった。
積荷はもちろん乗員達の寝室にまで入り、本当に私物まで確認した。
船内をしつこく調べて回った後、役人達は船員に全員甲板に出るよう命令した。
ズラリと並ぶ船員達を、厳格そうな役人が書類を手にして眺めて回る。リンデンブール号船員の個人情報は、事前に書類で提出してある。それを一人一人確認しているのだ。
入念過ぎる取り調べにゾッとした。バーンは船底倉庫に再び隠したあの兄妹に思いを馳せる。
(大丈夫。きっとやり過ごせる!
いくらコイツらだって、ガラクタばかりの倉庫の奥まで見て回ろうだなんて思わないさ!)
この税関調査が早く終わるよう、ただひたすら必死で祈った。
「乗員方の確認は終了です。
お手間を取らせましたな、船長殿。」
ようやく調査が終わったらしい。
税関役人の一人が甲板の隅に佇むマクミラン船長に歩み寄る。
握手を求めて差し出す右手を、船長が握ろうとした時だった。
「 待ってください!
この船にはもう2名、人が居ます!
申請のない者達だ、密航者です!!!」
隅に控えていた若い役人が、突然声を張り上げた!
( しまった! )
バーンは唇を噛みしめた。税関役人の中に 魔道士 がいたのだ!
探知魔法 が使われたのに違いない。この魔法を使われてしまえば、どこに隠れていようともたちまち見つけ出されてしまう。
リンデンブール号の甲板に、冷たい空気が張り詰めた。
「・・・どういう事ですかな? 船長殿!」
役人達の目がつり上がった。
「貴方が指揮を取るリンデンブール号は、過去の関税通過記録を顧みても不正などは無かったはずだ!
我々は貴方という人物を非常に高く評価していたというのに!
今すぐご説明いただこう!
なぜ、申請のない者が2人も乗船しているのですか!!?」
語気を荒げて詰め寄る役人を、マクミラン船長はジッと眺めていた。
長い、長い沈黙が続く。
甲板に集う者全員が、固唾を呑んで見守る中、
彼は厳かに口を開くと、信じ難い事を言い放った!
「発覚したならのなら仕方がない。
その2名は 私が 独断 で乗船を許可した者達だ。」
( えぇっ !!? )
リンデンブール号の乗員達に衝撃が走る!
嘘 をついた! あの真面目一辺倒なマクミラン船長が!
しかも、密航者を匿うと決めた、バーン達を守るかのように!!!
(な、なんで!??)
バーンは激しく混乱した。
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デレク国が管理するルシアーナ海峡の関所はとても厳しい。
密輸・密航は即刻監獄行き。死刑にだってなりかねない、とんでもない 重罪 である。
それを「やった」と告げるマクミラン船長に、役人達は激昂した。
「なぜそんな事を!?
密航の罪は認知の有無に関わらず、乗船を許した船側にも科せられるのですぞ!?
つまり、密航者だけじゃなく この船の全ての船員 が罪に問われるのだ!
仮にも船長の立場にあれば、知らなかったはずはないでしょう!?」
(・・・ !!! )
船員達がどよめいた。
密航は厳罰だとは聞いていた。
しかし、密航を許した船側の者まで罰せられるとは少しも思っていなかったのだ。
バーンも背筋が凍る思いを味わい、事の重大さに戦慄した。
しかし!
「 部下達に手を出さないでもらおう!
全て私が一存でした事だ!
罰するというのなら 私1人 にしていただきたい!!!」
船を預かる男の叫びに、再び甲板中が静まり返った。
それは心を強く揺さぶる、とても厳粛な静けさだった。
(・・・船長!!!)
こみ上げて来る感動に、喉を塞がれ言葉を無くす。
グッと両手を握り締め、バーンは必死で涙を堪えた。
それでも、泣き出してしまったに違いない。
時が止ったリンデンブール号の甲板上に、突然現れた その婦人 が大絶叫を上げなければ!
「 あ" な" た"ぁぁぁーーーーーっっっ !!!」
「ぎゃーーーっ??!」
凄絶極まる絶叫に、バーン達は1人残らず大混乱に陥った!
そんな彼らのすぐ目の前を 謎の婦人 が疾走する。
ドレスの裾をたくし上げ、髪を振り乱して走る彼女は恐怖を覚える凄まじい形相でマクミラン船長に突進した!
「あなたっ! あぁパトリック! ゴメンナサーイ!」
「ひぃい??! 」
ガバッと勢いよく飛びつかれ、マクミラン船長が悲鳴を上げた。
しかし、すぐにハッと顔色を変え、婦人の顔を凝視する。
「ラ、ララ?! どうしてここに!?」
「あなたの事 忘れちゃうなんて! 私、悪い妻だわ最低よーっっっ!」
「何の事だララ! いったい何がどうなってるんだ!?」
「本当にゴメンナサイ!
あぁあなた! 愛してるわぁーっっっ!!!」
「わかった愛してる!
俺も愛してるから落ち着いてくれー!!!」
(・・・な、何事???)
バーンは呆然と立ち尽くした。
リンデンブール号船員達もデレク国関所役人達も、みんなそろって茫然自失。
この異常な事態を遠巻きに見守るばかりだった。
マクミラン船長に取りすがり、泣き叫んでいる謎の婦人。
彼女とは別の女性の声が、聞こえてきたのはその時だった。
「・・・ごめんなさいね、皆さん・・・。」
全員一斉に振り仰いだ。
船橋に近い遊歩甲板。そこに一人の 魔女 がいた。
大魔女ミシュリー である。
ちなみにリンデンブール号は大魔女の国の輸送船。
突然自国の 女王 を目にしたバーン達は、言葉を失い固まった。
「その娘ね、私の妹なの。
夕べからずっとこんな調子で、私の手には負えなくて。
それで その娘の夫 に何とかしてもらおうと思って、転移魔法で連れて来たトコロなの。
でも機会が悪かったみたいね。
税関手続き中、ゴメンナサイ。その娘が落ち着いたらすぐ帰るわ。
だから 私達2人 の密航は、大目に見てもらえるかしら???」
「・・・はぃ・・・。」
デレク国の税関役人達は、大魔女の要望を受け入れた。
若い魔道士は不満そうだが、これはどうにも仕方が無い。
彼らの国は大魔女の国から 魔法支援 を受けている。
それ故このお願い事は、決して無碍にはできなかった。
---○○○---ε-(´∀`*)---○○○---
その後すぐに、リンデンブール号はルシアーナ海峡を後にした。
何とか全員無事だった。しかし平穏な時間は訪れない。
ララ と呼ばれた大魔女の妹が、ひたすら泣き喚いている。
その喧しさときたら嵐のごとし!
すっかり辟易した船員達は、甲板員をその場に残して自分達の持ち場に撤収した。
「ゴメンナサイあなたゴメンナサイ愛してる愛してるわパトリックぅ~!!!」
「わかった、わかったから!よしよし、大丈夫だから!
(頭ナデナデ、背中サスサス)」
どうしていいのかわからない。
バーンとロドニーは、困った顔を見合わせた。
「船長の奥さん、大魔女様の妹さんだったんっすか? 」
「しかも船長、奥さんに優しくしてあげてるぜ? 全然亭主関白じゃないぞ!」
「あら。 パト はもの凄い 愛妻家 よ?」
バーン達の疑問に答えたのは、いつの間にか隣に来ていた船長の義姉・大魔女だった。
「彼、とにかく優しくってね。
『妻には辛い労働はさせたくない』って、必死で働いて稼いでるのよ。
贈り物も良くしてるわ。ドレスや靴や装身具。あ、でも外じゃ地味な格好させてるみたいね。『他の男が言い寄ってきたら困る』ですって。これはちょっとやり過ぎかしら?
こんな人だから、妹もパトにベタ惚れなの。
『食事は大喜びで食べてくれるから、いつもおかずを作り過ぎちゃうの♡
お掃除したら必ず褒めてくれるから、家中ピカピカにしちゃうのよ♡』だって! はいはい、好きにしてって感じ?
ちょっとぶっ飛んでる夫婦だけど、子供の事はしっかり考えてるのよ。
挨拶もお礼もキチンと言えるいい子達。2人の教育の賜ね♪」
「・・・。」
バーンは思わずロドニーと一緒に、ダニエル甲板長の方を見た。
古参のベテラン船乗りは、呆れた様な面持ちになった。
「あん時ゃ、酔っ払ってたからなぁ。
話、盛ったンっすかい?船長。
そんな見栄張ったって、しょーがねぇでしょうが!」
「・・・。」
妻にガッシリ抱きつかれたマクミラン船長は、赤面を海の彼方に向けた。
それを眺める大魔女が、面白そうにクスクス笑って首飾りにそっと触れる。
神秘的な輝きを放つ 大魔女の首飾り 。
色とりどりに散りばめられた魔石の一つを指先で弾く。
キィン!
美しい音がして、甲板上に光が弾け子供が2人現れた。
船底倉庫に隠れさせた 兄妹 である。
驚き、辺りを見回す子供達に、大魔女が優しく微笑みかけた。
「さぁ帰りましょ。私がご両親の所へ連れてってあげる。
アンタ達を拐かした奴らもほっとかない。
キッチリ懲らしめてやらなきゃね!」
兄妹の顔がパッと明るく輝いた。
バーンも心から安心した。少女の頭を撫でる大魔女に、勢い良く頭を下げる。
「ありがとうございます、大魔女様っ!!♪」
「お礼は自分の船長におっしゃいな。」
大魔女はニッコリ笑って片目をつむる。
「そもそも彼なら反対しなかったはずよ。この子達を匿うって言ってもね。
きっとさっきと同じ嘘をつくわ。アンタ達を助けるために、自分がやった事にして。
そういう人よ、アンタ達の船長は。
そんな男じゃなかったら、可愛い妹をお嫁にやったりするモンですか!
それじゃ、私達帰るわね。
リンデンブール号の航海の無事を祈ってるわ!」
キィン!と首飾りが再び鳴って、大魔女姉妹と密航者兄妹は一瞬のうちに消え失せた。
「ありがとう!船乗りさん達!」
「お船屋さん、アリガトー!♪」
兄弟の声が微かに聞こえた。
不覚にも涙ぐむバーンの耳に、船長夫人の声が届く。
「愛してるわ!パトリックーーーっっっ!!!」
何故か断末魔を思わせる、鬼気迫るような 絶叫 だった。
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リンデンブール号の上甲板に、ようやく平和が訪れた。
マクミラン船長は大海原に目を向けたまま。所在なさげに佇む彼が、何だか不憫でちょっと可笑しい。
「・・・あのぉ。船長?」
バーンは恐る恐る声を掛けた。
捨て身で自分達を護ってくれた。そんな尊敬すべき素晴らしい船長といろんな話をしてみたい。
そう思い、ダメで元々誘ってみた。
「もしよかったらですけど・・・。
今夜1杯、一緒にどうです???」
「・・・。
・・・い・・・1杯だけ、だぞ???」
ポツリと応えるマクミラン船長は、ほんの少しだけ嬉しそうに見えた。
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その夜のリンデンブール号は飲めや歌えの宴会になった。
1杯どころの話じゃない。
浴びるように飲んだ船長の盛りに盛られた嫁話。それを肴に朝までみんなで羽目を外して騒ぎまくった。
(俺も、マクミラン船長みたいな男になろう!)
バーンは心に密かに思う。
(いざって時には仲間のために身体を張れる。
そんな 器の大きい男 になりたい!
・・・酒癖の悪さは見習わないけどね♪♪♪)
リンデンブール号は夜の大海原を突き進む。
空に掛った綺麗な月が、酔っ払い共が騒ぐ船をずっと照らし続けていた。
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密航者兄妹は無事に両親の元へ送り届けた。
人売り共もサクッと懲らしめ、地元の警察に突き出した。
兄妹を買った金持ちもしっかり忘れず制裁した。
王都の城に帰って来た大魔女姉妹は、どちらもホッと吐息を付いた。
「ありがとう、2の姉様。お騒がせしてゴメンナサイ。」
4番目が晴れやかな笑顔で、長い回廊を私室へと歩く大魔女の後を付いてくる。
「まったくよ!ホントにアンタときたら!
一時はいったいどうなるかと・・・あら?」
ふと、大魔女は立ち止まる。
回廊の向こうから走ってくる子供の姿が見えたのだ。
必死の面持ちで駆け付けて来たのは、元・5番目の魔女の小さな娘。
彼女は驚く大魔女を見上げ、泣きはらした目で訴えた。
「助けて、大魔女様!
お母様が 壊 れ ちゃ っ た よぅ!!!」
「 !!? 」
姪を抱き上げ回廊を走る。
客室の中に飛び込むと、小さな姪の壊れた母はソファでお茶を飲んでいた。
「まぁ、お帰りなさい、2の姉様。」
元・5番目の魔女がふわりと笑う。
「娘が何か言いまして?
可笑しいんですのよ、その子ったら。
お父様 に会いたい、なんて言うですの。
そんな人、い な い のにねぇ♪」
「・・・うわあぁ~~~ん!!!」
小さな姪は泣き出した。