大魔女様は婚活中

2024年4月4日

王都の空に号砲花火が上がった。
街は色とりどりの花で埋め尽くされ、城へ向かう大きな通りはリボンや横断幕で美しくに飾り付けられている。
広場には大きな市が立った。国中から商人が集まり大小様々な露店を開く。
工夫を凝らした露店には、所狭しと商品が並ぶ。取れたて新鮮な野菜や果物、旨味たっぷりの肉や魚。外国の珍しいお菓子を売る店や、特別価格の日常品をたたき売ってる店もある。
まるで華やかな 祭り が催されているようだった。
しかし楽しんでいる者はほとんどいない。人々は不安げに息をひそめ、王都中央にそびえ立つ「大魔女の城」を見上げている。
間もなく、大魔女が 国賓 と謁見するのだ。
歓迎の意を示すため、急ごしらえで用意した「祭り」。その国賓の目論みを考慮すれば、一向に盛り上がらないのは当然だった。

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大扉から真っ直ぐ伸びる赤い絨毯。その左右で威儀を正し、緊張した面持ちで居並ぶ 寡黙な大臣 と家臣達。
最奥にある豪華な玉座。そこに座る大魔女は、玉座の肘掛けに頬杖ついて努めて悠然として見せた。
この国賓を迎えるに当たり、一応歓迎しているように表向きだけ取り繕った。しかし、大魔女自身は何一つ特別な事はしていない。金のローブに身を包み、首には色美しい「大魔女の首飾り」。いつも通りの出で立ちは、これから迎え討つ相手への「絶対不服従」の証である。
それでも、前を見据えて毅然としている大魔女の姿は凜としていて、清く気高く美しかった。

「・・・ おなりでございます!」

大扉の脇に佇んでいた衛兵が、怯えた声で高く叫んだ。
待ち構えていた楽団が、高らかにファンファーレを奏で出す。
厳かに大扉が左右に開き、一陣の風が吹き込んできた。
とても禍々しい、凍えるような冷風だった。広間の人々は縮み上がり、恐怖に戦きどよめいた。
(小賢しいマネを!)
大魔女は舌打ちして立ち上がり、何かを払い除けるように右手を大きく振った。
広間の空気に温もりが戻る。風と一緒に送り込まれた邪気を清めて払ったのだ。

「ようこそ。
お待ちしておりましたわ。北の国の暴君様!」

不埒な来訪者を睨みつけ、大魔女は声を張り上げた。
自信に満ちた足取りでズカズカ広間に踏み込んで来た、厚顔無恥な不埒者。
彼はこの国の女王・大魔女に対し、一礼すらしなかった。

「大義であった。我が 妃 となる者よ!」

低い、凍てつくような声だった。
北の大国の 魔王。
金や宝石で装飾された黒いローブの大男が、大魔女を見るなりニヤリと嘲笑った。

---×××---(>_<)---×××---

初顔合わせの謁見はどうにか難なく(?)終了した。
その日の午後、すぐに舞踏会が開催された。このような催しは夜に行われるのが通常なのだが、大魔女はそれを許さなかった。
邪な魔法を使う者は、陽光照らす日中よりも夜間に魔力が強くなる。
たとえほんの少しでも勝機を与えるわけにはいかなかった。

「これはこれは。
我が花嫁は随分 野暮 で 無粋 だな。」

北の大国・魔王は大げさに両手を広げ嘲笑した。
謁見の場から舞踏会の会場へと様相を変えた大広間。そこに再び現れた大魔女は、最初の謁見と同じ姿。
金のローブと首飾りだけの出で立ちである。あからさまに見下す強敵に、大魔女は昂然と微笑んだ。

「あら、ごめんなさい? ですが私、この国の女王なんですの。
ご登場するなり邪気を放ってくださるような 輩 をお迎えしたんですもの。
そんな 不届き者 から家臣や民を護らねばならないわ。着飾ってなんかいられませんの♪」

辛辣な言葉に魔王は驚き、ほんの一瞬目を剥いた。
その目に閃いた 怒り と 憎悪 。しかしそれらの感情はすぐに 蔑み に取って代わる。

「なるほど、これはおもしろい。
噂通りの強情者だな、相手にとって不足は無い。中身は愚かで醜悪だが、魔力と美貌は気に入った。
我が妻となった暁にはこの私自ら相応しいドレスを選んでやろう。」
「まぁ、遠慮しますわ♪
そちらの嗜好に合わせていたら、人類外のマヌケなバケモノと間違われてしまいますもの!
ミミズにドレスを選んでもらったほうが、よっぽど綺麗でマシでしてよ?」
「ははは♪」
「ほほほ♪」

・・・見ている方が胃を痛めそうな、露骨に毒々しい言葉の応酬。
実際、家臣が数名体調不良で早々に広間を後にした。
その場の空気を和ませようと思ったらしい。まだ開始時間になってはいないが、寡黙な大臣が右手を上げて、広間の隅で待機していた楽団の指揮者へ合図を送る。
舞踏会の始まりである。
その様子は国中の民に公開される事になっていた。大広間に幾つか据え付けられている 魔法の水晶玉 によって、町や村の空の高みに舞踏会の映像が映し出されている。
招かれた人々は恐怖を胸に、流れ始めた円舞曲ワルツに合わせてギクシャク踊り始めた。

---♪♪♪---(>_<)---♪♪♪---

とても踊りダンスを楽しむ状況ではない。
強ばった笑顔でぎこちなく必死で踊る紳士達や淑女達。恐怖や不安と戦いながらの円舞曲ワルツはお義理にも優雅とは言えず、衝突・転倒が続出した。
中にはとても踊っていられず泣き出す淑女まで現れた。
惨憺たる有様だが、無理もない。世界に混沌をもたらそうとする冷酷無比の魔王の前で、平常心で華麗に舞える度胸のある者はほとんどいない。

(・・・これ以上は無理ね。)

玉座に座る大魔女は覚悟をきめて立ち上がった。
優雅な動きで傍らにそっと右手を差し伸べる。
そこには豪奢な貴賓席にドッカリ座ってくつろぐ魔王。懸命に踊る人々を嘲り笑って楽しむ男が、不躾に大魔女を睨めつけた。

「踊っていただけますかしら? 北の国の暴君様。」

楽団の音楽が、ピタリと止んだ。
大広間中が静まり返る。寡黙な大臣が眉を潜め、円舞曲ワルツを踊る人々も不安げに足を止め立ち尽くす。
誰もが玉座の大魔女を見上げ、固唾を呑んで見守った。
もちろん、空に映し出された舞踏会の様子を、不安げに眺める国民達も。

「いいだろう。」

魔王が貴賓席から立ち上がった。
彼は大魔女の手を乱暴に掴むと、大広間の中央へ連れて行く。
家臣達がどよめいた。
一国の女王にあまりにも無礼!もの申そうとした家臣もいたが、魔王を護衛する従者達に牽制されて口をつぐむ。
大魔女は家畜のように引きずられていく屈辱に堪え、寡黙な大臣を始めとする家臣達に落ち着くようにと目配せした。
むやみに事を荒立ててはいけない。この男は何の躊躇いも無く人に危害を加えるだろう。
大事な大臣・家臣達が傷つく姿は見たくは無かった。

主役2人の登場に、広間中央が広く開けられ大きな人の輪が出来上がる。
楽団が再び楽器を奏で始めた。
緩やかな円舞曲ワルツの調べ乗って、大魔女と魔王は踊り出した。

---♪♪♪---(>_<)---♪♪♪---

「さて、大魔女よ。
早速婚姻の証である 名前 を教えてもらおうか。」

踊り始めるなり、魔王が言った。
その言葉だけでゾッとした。
本音を言えば、こんな男と一緒に踊るなど心の底から嫌だった。
こうして手を握られるのも、抱き寄せられるのも吐き気がするほど悍ましい。激しい嫌悪に必死で堪えて、大魔女はニッコリ微笑した。
「まぁ、せっかちですのね。躍っている最中ですのよ?」
「そうだ、こんな茶番に付き合う時間が惜しい。」
大魔女を乱暴に振り回すようにして、魔王は傍若無人に踊る。
「この国ばかりにかまってはいられない、手に入れたい国はたくさんある。」
「やっぱり世界征服する気だったのね。身の程知らずです事!」
「なんとでも言うがいい。」
魔王が口を歪めて笑う。
残忍な本性を現しつつある。耳障りにざらついた声が、次第に苛立ちを帯び始めた。

「さっさと名前を言え!貴様の民が無駄に手傷を負う前に!
それともこの国を地図から消してくれようか?
いずれにせよ貴様に選択できる未来は無い! 我が妃となり、我にその身と魔力を捧げる以外はな!」

大魔女を見据える魔王の目が、邪気をはらんで殺気立つ。
捕らえた獲物を嬲って楽しむ野獣を思わす双眸は、至極冷酷で残忍だった。
しかし。

「上等ですわ。鉄面皮のクズ野郎!!!」

その目線を正面で受け止め、大魔女も不敵に笑って見せた。
選択肢がないなど、わかっている。
国と民の安寧を思えば、本当にまったく無いのだから。

「結婚なら、してあげる。
でも覚えておくのね! 私は簡単に屈する魔女じゃない。」

足取りステップを踏む足を止め、魔王の手を振り払う。
お前などに囚われない! 強く激しい思いを込めて、大魔女は魔王を突き放す!

「さぁ、戦いの始まりよ!
この先続く人生で、今日この時を悔いるがいいわ!
身の程知らずの不埒者、心して聞きなさい!
この国の女王の『婚姻の呪文』!
     大魔女たる 私 の 名 前 は ・・・!!!」

その時だった。
大広間の扉が大きく開き、その 若 者 が飛び込んできたのは!!!

  「 ミネルヴァ ・ ミレディーヌ ・ ミリセント !!!」

耳に心地良い若者の声が、大広間中に響き渡る!

  「続きは再会した時、教えてもらう予定だった!
   さぁ、教えてもらおうか!
   もちろんそんなクズ野郎にじゃなく この俺 にだ、赤 唐 辛 子 !!!」

「!!? な・・・??!」
大魔女は言うはずだった名前を飲み込み、目を見開いて絶句した。

---☆☆☆---∑(゜0゜;)---☆☆☆---

大広間中が騒然となった!
どよめきざわめく人々をよそに、飛び込んできた若者が鋭く叫ぶ!

「準備は全て整った!ラクシュ郷、今だ!!!」

その声に反応したのは、とても意外な人物だった。
「ありがとう、オスカー!」
人々に背を向けタクトを振るう楽団の 指揮者 が振り向いた。
彼はタクトを投げ捨てると、短い呪文を詠唱した!

パ キ ーーーーーー ン!!!

乾いた音が耳を打つ。
それと同時に魔王の顔が、醜く歪み引きつった!
魔王の足下が輝き始める。
光は清らかな波動を放ち、魔王が立つ大理石の床に徐々に 円 を型どっていった。
「そこまでです、兄 上!」
指揮者だった青年が、凜とした声で魔王に告げる。

「今、貴方の足下で輝くのは、魔力を封じる魔法陣!
おとなしく 負け を認めるのです!!!」

青年が軽く右手を振る。
すると今まで円舞曲ワルツを演奏していた楽団員の数名が、楽器を手放し立ち上がった。
どこかに隠し持っていたらしい剣や杖を素早く取り出し、魔王の従者達に襲い掛かる!
大広間を警護する憲兵達も喜び勇んで加勢した。
あっという間に従者達は、縛り上げられ捕らわれた。

---★★★---\(^O^)/---★★★---

電光石火の逆転劇!
その一部始終を目の当たりにして、大魔女は愕然と立ち尽くした。
「我が 兄 の愚行と数々のご無礼、お詫びの言葉もございません。偉大なる大魔女よ。」
ついさっきまで指揮者だった青年が、壇上から降り跪いた。

「私はそこに居ります愚者の 弟 でございます。
愚兄を捕らえるあの魔法陣は、私が編み出した 封印魔法 。
捕らえた者の内なる魔力を半永久的に封じ続ける、極めて強力な魔法でございます。
ご安心ください、大魔女よ。この愚兄もう、二度と魔法を使えません。
世界を手中に納めるなどと、たとえ戯れ言でも言えません。」

「・・・。」
あまりにも突然で言葉がでない。
大魔女は激しく混乱した。
遠くに見える広間の入口。大扉に寄り掛り、息を切らして苦しげに喘ぐ若者から目が離せない。
よほど全速力付けて付けて来たのに違いない。彼は立っているのもやっとといった、疲れ果ててる様子だった。
逞しい体躯に精悍な顔つき。しかしその顔は確かに面影がある。
この世界でたった1人だけ、「途中まで」名前を教えた 少年 。
今、目の前に彼が居る。それがどうしても信じられない。
大魔女はまるで幼子のように、恐怖さえ覚えて狼狽えた。

「私がこうして馳せ参じる事ができたのは、あの オスカー のお陰なのです。」

ラクシュ郷と呼ばれた魔王の実弟。
つまり、北の大国先王のもう1人の王子が説明した。

「オスカーは我々の 恩人 です。
愚兄の野望に蹂躙されて荒廃しきった我が国のため、彼は自らの危険も顧みず必死で奔走してくれました。
牢獄に捕らわれた父王を密かに救い出し、愚兄の支配を良しと思わぬ同志を集めて、反旗を翻す策を講じてくれたのです。
まだ未熟で若輩者の私を、それこそ本当の 兄 のように励まし支えてくれました。
彼の助力を得られなければ、この封印の魔法陣も完成していなかったでしょう。」

話が自分の事に及び、気恥ずかしそうにオスカーが笑う。
笑顔がまるで変っていない。懐かしい陽気な笑みだった。

「ただ、強力な魔法にはそれ相応の魔力を要する。
我が国では愚兄の邪気が魔力を穢し、魔法陣の力を充分に発揮できませんでした。
それゆえ大魔女の貴女様が清浄な気を放つ、この国で使用せざるを得なかったのです。
オスカーが封印魔法を強化する魔石をこの城の要所に設置する。私と救国の同志達が楽団に扮し、舞踏会の場でオスカーの指示と機会チャンスを待つ。
それが、愚兄を確実に捕らえるための 策 でございました。
お許しください。大魔女よ。女王たる貴女に無断でこのような騒ぎを起こしましたる事、誠に申し訳なく思っております。」

跪いたまま低頭していたラクシュ王子が顔をあげ、ニッコリ涼やかに微笑んだ。

「ですが、ご安堵頂きたい。
先程も申し上げましたが、そこなる愚か者はもはや魔道士ではなく、罪を犯した咎人です。
兄は貴女やこの国の民、いえ、世界中の人々の幸せを脅かした。
その罪は重い。彼は封印魔法に捕らわれたまま、我が国の牢獄でその一生を終えるでしょう。」

優しげな顔立ちをしている割には、かなり辛辣な事を言う。
この青年は愚かだった兄に代り、次代の王になるのだろう。
荒廃した祖国をきっと立派に立ち直らせるにちがいない。その上で、護り育み繁栄させる、素晴らしい君主になるのだろう。
「・・・そうね。貴方なら、やれるわね。」
ラクシュ王子の笑顔につられ、大魔女も小さく微笑んだ。
しかし・・・。

「おのれ・・・おのれ・・・!」

憎悪に満ちたつぶやきに、大魔女はハッと振り返った。
「魔王だった男」が身悶えている。
囚われた魔法陣から逃れられず、戦慄く両手で顔を覆って亡霊のようによろめき歩く。
その姿は無様で哀れ。怖気が走るほど醜悪だった。

「オノレ・・・おのれぇぇ・・・!!!」

どす黒い憎しみをまき散らしながら、彷徨う男が顔を上げた。
男は血走った目で大魔女を捕らえ、悍ましい声で咆哮した!!!

「オノレおのれオノレ、おのれェェェーーーっっっ!!!」

人とは思えない形相で、男が大魔女に襲い掛る!
獰猛極まる猛禽類が獲物に掴みかかるかのように、男の大きく強靱な手が大魔女の細い首を狙う!
この後及んで見苦しくあがくなどとは思わなかった。
仮にも魔法使いだった者が、自らの手で攻撃するとも少しも思っていなかった。
防御の魔法は、間に合わない!
油断していた大魔女は、自分自身に絶望した。

「・・・ 赤唐辛子 !!!」

オスカーの切羽詰まった声がした。
ほんの一瞬視界の端に、血相変えて走り出す彼の姿が見て取れた。
助けに来ようとしてくれている。しかし大広間の入口からではとても間に合いそうにない。
( せっかく、また会えたのに・・・。)
大魔女は両目を固く閉じた。

「アタシの娘になにしてくれてんだい、鉄面皮のクズ野郎!!!」

凄まじい怒声が轟いたのは、その時だった!
ドォン!ともの凄い音がして、大広間中が大きく揺れた!

(・・・え???)

恐る恐る、目を開く。
そこに大魔女が見たものは、幼い頃から叱られてばかりのあまり気の合わない 母 親 の背中。
ドレスの裾をたくし上げ、鬼の形相で仁王立ち。鼻息荒い母親は、広間の隅まで吹っ飛ばされた男を睨んで雄々しく咆えた!

「この娘はね、13人いる姉妹の中で一番優しい良い子なんだ!
女王としての使命や責任、義務なんてものが絡んでなけりゃ、お前みたいな禄でなしにくれてやる娘じゃないんだよ!
とっととお帰り、クズ野郎!
またこの娘に手ェ出す気なら、このアタシが許さないよ!!!」

「・・・。(し~ん。)」
白目を剥いて転がっている男が応えるワケはない。
怒り狂った母親の攻撃魔法をまともに喰らい、どうやら失神したらしい。
この様子なら国に送り返されるまで、目覚める事はないだろう。

「ばぁば、スゲェ!♪」
「カッコいい!おばーちゃん♪!」
「おバァちゃま、ステキっ♡!」
「バァバ、バァバーーー♪♪♪」

子供達が歓声を上げた。
長姉の元魔女 を始めとする大魔女姉妹の子供達。両親と一緒に舞踏会に招かれ、大広間の片隅で一部始終を見ていた彼らは、祖母の勇姿に歓喜した。
躍り上がって喜ぶ孫達に、怒り心頭の面持ちだった母親の顔に笑みが浮かぶ。
かつてこの国の 大魔女 と呼ばれ、今は可愛い孫達の ばぁば 。
彼女は得意絶頂で、威風堂々、ふんぞり返る!

(・・・よく言うわよ。
子供の頃はあんなにしょっちゅう「可愛げがない」とか言っといて・・・。)

すっかり呆れた大魔女は力無くその場にへたり込んだ。
いろんな事が起りすぎて、気持ちの整理が追いつかない。半ば放心している頭がちっとも付いていかなかった。
だから、またしても油断した。
突然、誰かに肩を掴まれ、強く抱きしめられたのだ!

「 !??! きゃ・・・!!? 」

悲鳴を上げるヒマなどなかった。あっという間の事だった。
母と姉妹達家族、寡黙な大臣はもちろんの事、家臣達や来賓一同、大広間中の人が見守る中。
輝く魔法の水晶玉が国中の空に映像を映し、その一部始終を余すところなく伝えているにも関わらず。
駆け付けてきた オスカー に、大魔女は 唇 を奪われた。

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